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くまりはN!S!T!「お腹の不調が体型を変える?!腸内細菌と筋肉の意外な関係」
カテゴリ:医療機関の方へ,くまりはNST!
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くまりはN!S!T!「お腹の不調が体型を変える?!腸内細菌と筋肉の意外な関係」 吉村芳弘(サルコペニア・低栄養研究センター)
「最近、お腹の調子が良くないな…」と感じることはありませんか?実はその不調、お腹だけの問題ではなく、あなたの筋肉量や脂肪のつきやすさ、つまり「体組成」にまで影響を及ぼしているかもしれません。今回は、私たちの健康を陰で支える「腸内細菌」と、体型との驚くべき関係についてご紹介します。
■腸内環境が乱れると、筋肉が減ってしまう?
私たちの腸内には、多種多様な細菌が住み着き「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」という生態系を作っています。しかし、加齢や食生活の乱れ、ストレスなどでこのバランスが崩れると、悪玉菌が優勢になり、腸内で有害物質が作られ、慢性的な炎症が引き起こされることがあります(図1)。
この「静かな炎症」こそが、体組成を変化させる原因の一つです。炎症は、筋肉が作られるのを邪魔し、分解を促してしまいます。その結果、運動をしても筋肉がつきにくくなったり、年齢とともに筋肉が著しく減少する「サルコペニア」のリスクが高まったりするのです。

■当院の研究でも明らかに!腸と筋肉の深いつながり
当院で脳卒中後のリハビリテーションを行っている患者様にご協力いただいた最近の研究でも、この腸と筋肉の関連を裏付ける、興味深い結果が得られています(表1、図2)。

表1. 【当院の研究成果サマリー】腸内細菌叢の多様性と臨床アウトカムの関連 1-3)

比較したグループ
腸内環境の主な特徴
身体の状態
筋肉量が多いグループ
● 腸内細菌の多様性が高い
● 善玉菌の一種「酪酸菌」が多い
● 全身の炎症反応が低い
● リハビリによる機能回復が良い傾向
筋肉量が少ないグループ
● 腸内細菌の多様性が低い
● 悪玉菌の割合が比較的高い    
● 全身の炎症反応が高い
● 回復に時間がかかる傾向
● 全身の炎症反応が高い
● 回復に時間がかかる傾向



このように、腸内環境が良好な患者様ほど、筋肉量を維持しやすく、リハビリの効果も出やすい可能性が示唆されました。特に、腸内で「酪酸」という物質を作る「酪酸菌」の存在が、筋肉の維持に重要であると考えられます。


■健康的な体型は「腸活」から!
では、どうすれば良いのでしょうか?答えは、腸内環境を整える「腸活」にあります。善玉菌を元気にし、腸内バランスを整えることで、筋肉の維持・増加をサポートし、健康的な体づくりにつながります(図2)。
具体的には、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖、善玉菌そのものを含む発酵食品を日々の食事にバランスよく取り入れることが大切です。

■まとめ
腸内細菌のバランスは、便通だけでなく、筋肉量や脂肪量といった私たちの見た目や身体機能にも深く関わっています。日々の生活に「腸活」を取り入れて、腸の中から健康で若々しい体を目指しませんか?まずは、いつもの食事に一品、食物繊維や発酵食品をプラスすることから始めてみましょう。

引用文献
1.    Yoshimura Y, Wakabayashi H, Nagano F, Matsumoto A, Shimazu S, Shiraishi A, Kido Y, Bise T, Hamada T, Yoneda K, Maeda K. Systemic inflammation is associated with gut microbiota diversity in post-stroke patients. Eur Geriatr Med. 2025
2.    Nagano F, Yoshimura Y, Wakabayashi H, Matsumoto A, Shimazu S, Shiraishi A, Bise T, Kido Y, Hamada T, Kuzuhara A, Yoneda K, Maeda K. Gut microbiome diversity and nutrition intake in post-stroke patients. Geriatr Gerontol Int. 2025
3.    Yoshimura Y, Wakabayashi H, Nagano F, Matsumoto A, Shimazu S, Shiraishi A, Kido Y, Bise T, Hamada T, Yoneda K, Maeda K. Gut microbiome diversity is associated with muscle mass, strength and quality in post-stroke patients. Clin Nutr ESPEN. 2025 Mar 4;67:25-33.



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