―下肢の切断回避、痛み・だるさ・冷感からの改善を目的に―
〇『くまもと下肢救済センター』開設 2014年7月
〇再生医療『重症虚血肢に対する脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた血管新生療法』の
再生医療等提供計画が九州厚生局に受理いただく;2017年10月
重症虚血肢は食事(飽食)や運動不足などによる動脈硬化が原因で、糖尿病、高血圧症、喫煙、加齢などがリスクを高める要因です。
当院の下肢救済センターは血管外科と形成外科により開設しました。重症虚血肢とは、動脈硬化によって動脈が狭くなったり詰まったりして、下肢の血行障害をおこす閉塞性動脈硬化症の中で最も重症の病態です。同様の病態は血管炎やバージャー病(閉塞性血栓性血管炎)でもおこります。
なお、この名称は2017年欧米で提唱されたガイドラインによって包括的高度慢性下肢虚血へと変更になっています。これは重症虚血肢の患者さんが感染を合併していることが少なくなくその程度を加味した指標に変更されたため、従来よりもやや虚血の程度が緩められより幅広い形となっています。ただ当院での治療受理時は未だ重症虚血肢の名称であったためここでは重症虚血肢で統一してご説明いたします。
この病気の症状が軽い段階では、歩行や足の運動時に痛みやだるさがありますが、休めば症状が改善します。しかし重症虚血肢では安静時でも足のしびれや冷感といった症状が現れ、皮膚が黒ずむなどの色調変化や潰瘍や感染症をおこし壊疽(えそ)になる恐れもあります。
そのために「下肢の部分的切断から徐々に大切断」を招くことが多くあります。
診療は、血管外科医師による問診・視診から始まります。
検査項目;
・足関節上腕血圧比(ABI)検査をおこないます(この検査では腕を足の血圧と同時に測定し、その比を確認します)。
・運動負荷試験は血流不足の度合いを確認する検査方法です。
・動脈造影検査やCT、MRI、超音波(エコー)などを使用して動脈の状態を確認する検査もおこないます。
症状がよく似たほかの病気と区別するためにも、疑わしい症状がある場合はかかりつけの医療機関を受診して下さい。当院では関係する専門医師との連携により行います。
下肢閉塞性動脈硬化症は動脈硬化が原因で、糖尿病、慢性腎不全、高脂血症、脂質異常症、喫煙、高齢などが動脈硬化のリスクを高くし、25%の方は糖尿病を合併しているといわれています。60歳以上の1~3%、70歳以上では2~5%と言われています。そのため重症虚血肢の患者様も高齢であるほど割合が高くなる傾向があります。
重症虚血肢であれば血管に対する直接的な治療が必要です。血管内治療(カテーテル治療、風船治療)はカテーテルに風船を付けたものを血管中へ挿入しふくらませ、狭くなった血管をひろげることで血流を改善する治療法です。ステントといって金属の筒を挿入し中支えすることもあります。
バイパス手術とは代用血管(主にご自分の静脈を使用します)を用いてまったく別ルート(いわゆるバイパス)を作ることで血流を確保する方法です。
その他、血流を増加させる治療として抗血小板薬,血管拡張薬などの内服治療や高気圧酸素治療など集学的治療をおこないますが、治療中の判断によりやむをえず下肢切断になると、歩行が困難になり生活の質(QOL)が著しく落ちます。下肢切断後の生命予後も短くなると言われています。
また、重症虚血肢の保存的治療後では1年以内に切断が必要になるケースが多く、非常に困難極まる疾患です。
次に、当院が提供する再生医療は『重症虚血肢に対する脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた血管新生療法』です。この再生医療を提供するためには国の再生医療等安全性確保法に沿って手続きと審査が必要で、最終的に厚生労働省の九州厚生局により受理いただき治療が可能になります。
当院の再生医療は、患者様の皮下脂肪に豊富に含まれる幹細胞群を用いた治療方法で、今まで治療困難であった疾患に対して、新たな改善を期待する治療で、近年大変期待される治療法として確立されつつあります。
この新法は、2014年11月から始まったばかりで、保険収載になっていない疾患がほとんどで患者様にご負担いただいているのが状況です。
しかし、当院において3名の重症虚血肢に投与し、血管の増生、潰瘍の改善、痛みの軽減、冷感の解消、歩行力アップ、何よりも下肢の切断を心配していましたが、治療により血流を確保し下肢を切断から回避出来ました。
〇再生医療『重症虚血肢に対する脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた血管新生療法』の
再生医療等提供計画が九州厚生局に受理いただく;2017年10月
重症虚血肢は食事(飽食)や運動不足などによる動脈硬化が原因で、糖尿病、高血圧症、喫煙、加齢などがリスクを高める要因です。
当院の下肢救済センターは血管外科と形成外科により開設しました。重症虚血肢とは、動脈硬化によって動脈が狭くなったり詰まったりして、下肢の血行障害をおこす閉塞性動脈硬化症の中で最も重症の病態です。同様の病態は血管炎やバージャー病(閉塞性血栓性血管炎)でもおこります。
なお、この名称は2017年欧米で提唱されたガイドラインによって包括的高度慢性下肢虚血へと変更になっています。これは重症虚血肢の患者さんが感染を合併していることが少なくなくその程度を加味した指標に変更されたため、従来よりもやや虚血の程度が緩められより幅広い形となっています。ただ当院での治療受理時は未だ重症虚血肢の名称であったためここでは重症虚血肢で統一してご説明いたします。
この病気の症状が軽い段階では、歩行や足の運動時に痛みやだるさがありますが、休めば症状が改善します。しかし重症虚血肢では安静時でも足のしびれや冷感といった症状が現れ、皮膚が黒ずむなどの色調変化や潰瘍や感染症をおこし壊疽(えそ)になる恐れもあります。
そのために「下肢の部分的切断から徐々に大切断」を招くことが多くあります。
診療は、血管外科医師による問診・視診から始まります。
検査項目;
・足関節上腕血圧比(ABI)検査をおこないます(この検査では腕を足の血圧と同時に測定し、その比を確認します)。
・運動負荷試験は血流不足の度合いを確認する検査方法です。
・動脈造影検査やCT、MRI、超音波(エコー)などを使用して動脈の状態を確認する検査もおこないます。
症状がよく似たほかの病気と区別するためにも、疑わしい症状がある場合はかかりつけの医療機関を受診して下さい。当院では関係する専門医師との連携により行います。
下肢閉塞性動脈硬化症は動脈硬化が原因で、糖尿病、慢性腎不全、高脂血症、脂質異常症、喫煙、高齢などが動脈硬化のリスクを高くし、25%の方は糖尿病を合併しているといわれています。60歳以上の1~3%、70歳以上では2~5%と言われています。そのため重症虚血肢の患者様も高齢であるほど割合が高くなる傾向があります。
重症虚血肢であれば血管に対する直接的な治療が必要です。血管内治療(カテーテル治療、風船治療)はカテーテルに風船を付けたものを血管中へ挿入しふくらませ、狭くなった血管をひろげることで血流を改善する治療法です。ステントといって金属の筒を挿入し中支えすることもあります。
バイパス手術とは代用血管(主にご自分の静脈を使用します)を用いてまったく別ルート(いわゆるバイパス)を作ることで血流を確保する方法です。
その他、血流を増加させる治療として抗血小板薬,血管拡張薬などの内服治療や高気圧酸素治療など集学的治療をおこないますが、治療中の判断によりやむをえず下肢切断になると、歩行が困難になり生活の質(QOL)が著しく落ちます。下肢切断後の生命予後も短くなると言われています。
また、重症虚血肢の保存的治療後では1年以内に切断が必要になるケースが多く、非常に困難極まる疾患です。
次に、当院が提供する再生医療は『重症虚血肢に対する脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた血管新生療法』です。この再生医療を提供するためには国の再生医療等安全性確保法に沿って手続きと審査が必要で、最終的に厚生労働省の九州厚生局により受理いただき治療が可能になります。
当院の再生医療は、患者様の皮下脂肪に豊富に含まれる幹細胞群を用いた治療方法で、今まで治療困難であった疾患に対して、新たな改善を期待する治療で、近年大変期待される治療法として確立されつつあります。
この新法は、2014年11月から始まったばかりで、保険収載になっていない疾患がほとんどで患者様にご負担いただいているのが状況です。
しかし、当院において3名の重症虚血肢に投与し、血管の増生、潰瘍の改善、痛みの軽減、冷感の解消、歩行力アップ、何よりも下肢の切断を心配していましたが、治療により血流を確保し下肢を切断から回避出来ました。
<手術室における皮下脂肪採取から投与までのフロー図は以下の通りで、培養すること なく約4時間後には投与するシンプルなシステムです。>
—症例紹介—
1)88歳女性の骨髄炎合併の重症虚血肢への再生医療
紹介医療機関で保存治療の経過観察を行いましたが改善がなかった患者様です。
※右下腿上・下部の血管造影の画像:血流増強が確認できます
再生医療後の初期段階での改善から2年半後の病状も非常に安定しており現在も定期的に外来にお越しいただいております。
再生医療後の初期段階での改善から2年半後の病状も非常に安定しており現在も定期的に外来にお越しいただいております。
2)64歳男性の左下肢への再生医療(右大腿切断後)
右下腿上・下部の重症虚血肢で第2趾(示趾)の骨髄炎合併の症例で、幹細胞群投与の効果として血流の増強(改善)により冷感と痛みが解消し2年半後の現在も定期的に通院いただいています。
また、既に右下肢を切断している重度の症例でしたが、左下肢の切断を回避し潰瘍は改善方向で3年経過し皮膚潰瘍は著明に縮小・安定維持されています。
今回ご案内の重症虚血肢はどなたにも起こりうる疾患ですが、早期の診察と治療により下肢の切断に至らずに済む可能性は充分にあります。
是非とも、かかりつけの先生や当院の専門医師を受診いただきますよう願っております。
特に高齢者の下肢切断は、筋力が低下しており日常生活を非常に困難にします。
再生医療は負担軽減の選択肢となり得る場合もございます。ご相談お待ち申し上げます。
また、既に右下肢を切断している重度の症例でしたが、左下肢の切断を回避し潰瘍は改善方向で3年経過し皮膚潰瘍は著明に縮小・安定維持されています。
今回ご案内の重症虚血肢はどなたにも起こりうる疾患ですが、早期の診察と治療により下肢の切断に至らずに済む可能性は充分にあります。
是非とも、かかりつけの先生や当院の専門医師を受診いただきますよう願っております。
特に高齢者の下肢切断は、筋力が低下しており日常生活を非常に困難にします。
再生医療は負担軽減の選択肢となり得る場合もございます。ご相談お待ち申し上げます。
熊本リハビリテーション病院
くまもと下肢救済センター
再生医療センター
くまもと下肢救済センター
再生医療センター